公爵閣下の愛妻

第6章 名前を呼んで

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しばらく庭でお茶をして美味しいお菓子をこれでもかとたくさん食べて僕は幸せだった。
すごい贅沢しちゃった……!
それから公爵様にまた手を引かれ屋敷の中を案内してもらった。
一階には応接間や撞球室、喫煙室、大、中、小の広間、食堂。
二階はほぼ客室と懇談室。
三階が公爵様やご家族のお部屋や書斎、書架室があり全て私的場所になる。
その他に菜園、温室や厩舎、小さな教会、別棟には厨房や洗濯室、この屋敷で働いてくれている人達の住居があると教えてもらいどれだけ広いんだと驚いた。
全部見ていたら1日かかると言われて所々の部分だけ見せてもらったけれど、どの部屋も広くてすごかった。
高価そうな家具に美しい絵画があちこちに配置され飾られている。
しかもホコリひとつ落ちていないし使われていない部屋でさえ掃除が行き届いていた。
すごい。
この屋敷で働いている人も50人以上はいるらしい。
僕の家も相当なお金持ちだと思っていたけどやっぱり華族。
格が違う。
終始口を開けてうわあ、うわあと言っていたら公爵様にクスクス笑われて恥ずかしかった。
幼稚ですみません。
そしてあらかた部屋を見終わってまたはじめに案内された僕の部屋だと言われた場所に戻った。

「歩き回って疲れただろう?」

公爵様がソファに座りその隣をポンポンと叩いた。
まさか僕に隣に座れと仰るの⁉︎
無理!
僕はそろそろと少し距離を開けてちょこんと座った。
だがそれがお気に召さなかったらしくもう一度公爵様はポンポンとソファを叩いた。
……やっぱりだめなんですね。
そう思いながら羞恥に耐え叩かれた場所に座りなおした。
公爵様をちらりと見るととても満足そうに僕に甘い眼差しを向けている。

「さっきから気になっていたんだけど花さんは私のことを名前で呼んでくれないの?」

はっ⁉︎名前⁉︎何、突然⁉︎

「先程から君は公爵様としか呼んでくれていないなと思って。夫婦なのになんだか壁ができているようで悲しい。それに敬語もやめにしよう。君の普段の喋り方で接してほしいな」

えー⁉︎
そんな……下男だった僕が華族でも最高位の公爵様の名前を気安く呼ぶなんておこがましいです!
でも呼ばないといつまでも待ってるだろうし。
でもやっぱり恐れ多いし。
どうしようどうしようと悩んでいたら名前を呼ばれた。

「花」
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