公爵閣下の愛妻

第9章 仕立て屋と不器用男子

  • テキストサイズ
「今日は仕立て屋を呼んでいるから、君に似合う服を作ろう」

ちっちゃな逃亡劇も伊周の謝罪と約束で(最後に予想外が起きたけど)幕を降ろし目の前に並べられた朝食、今日は和食!に目を輝かせていると伊周が僕に話しかけた。

「仕立て屋?」

僕はキョトンとして問い返した。
だがヨダレをたらさんばかりの僕の姿に伊周は笑いをこらえながら「ごめんね、先に食べようか」と僕にお箸を渡してくれた。

「君が来る前に衣服は何着か用意しておいたんだがやはり実際にサイズを合わせて一緒に決めたかったから来てもらったんだ」

そういえば寝間着を脱いで持参して来た服を着ようとしたら伊周が僕のために用意してくれていた真新しいシャツとズボンを着せ穿かせてくれた。
持って来た服は「クローゼットにしまっておくからね」と藤原さんに渡していた。
あんな薄汚れた服でウロチョロしてたら伊周の面目がないもんな……。
思い出してズーンと落ち込みかけていたら伊周が僕の口に卵焼きを入れた。

「ほら花さん、食べないと料理長ががっかりするよ?」

そっそうだ。せっかくのご飯が冷めてしまう。僕は口に入った卵焼きを咀嚼してパァッと顔が綻ぶ。

「おっ美味しい〜!」

真っ白なご飯に焼魚、卵焼き、煮物、菜っ葉のお浸し、汁物、香物に忙しなく手をつけモグモグしているとなぜか今日は後ろに和食専門の料理長さんが厳つそうな顔をゆるゆるに緩めニコニコと控えていた。
こっそり藤原さんに聞いたら昨日の洋食の料理長さんが僕の幸せそうな食べっぷりを自慢していたらしくそしたら和食の料理長さんも見たいと言い出しこうなったらしい。
食い意地張ってただけなのに恥ずかしい!
全て完食して両手を合わせてご馳走さまをして料理長さんにもお礼を言うとホクホクした顔でお辞儀して厨房へ戻って行った。

「美味しかった?」

伊周はそう言うと手を伸ばして僕の口元についていたご飯粒を取って自分の口に入れた。
ボンっと顔が真っ赤になる。
ぎゃー!言って!自分で取るから!
しばらくゆっくりお茶を啜っているとコンコンコンと扉がノックされ洋装の女中さん(外国ではメイドと言うらしい)が入ってきて伊周に来客が来たことを伝える。
伊周は「ありがとう」と女中さんに言って僕に振り向いた。

「花さん、仕立て屋が来たようだ。おいで」

手を差し出され僕はその手を取って一緒に応接間に向かった。
/ 382ページ

この小説のURLを

メインメニュー

トップへ