どうぞ、お好きなチョロ受けを【チョロ受け短編集】

第20章 素直じゃない二人

  • テキストサイズ
「……ねぇ、あっついんだけど」

ぽつりとチョロ松が呟いた。チョロ松とトド松は背中合わせで密着していた。部屋にはチョロ松とトド松の二人しかいなかった。トド松は相変わらずスマホを弄っていた。ファッションサイトを閲覧している。チョロ松はもう一度暑いと小声で呟いた。

「はぁ?頭おかしいんじゃないの?寒いでしょ。仕方ないから僕が寄り添ってあげてるっていうのに」
「ムカつくなぁ。暑いから離れてよ、気持ち悪い」
「はぁっ!?気持ち悪いって何さ、一応僕たち恋人だよね!?」
「さぁ」

そう、この二人は恋人である。見ての通り二人ともツンツンしており、ほかの兄弟も呆れるほど。でもなんだかんだ言って仲は良い。相性がいいのだろうか。

「あーあ、チョロ松兄さんてば本当冷たい。合コンでも行こっかなー?」
「いってらっしゃーい。いい女の子見つかるといいね」
「っ、ふんっ、いってくるよーだ!寒いって言ってもあっためてあげないんだから!」
「だから暑いって言ってるだろ、はいはい行った行った」

いってきますと勢いよく襖を閉めた。どたどたと廊下を駆ける音が聞こえる。床に穴が開かないか心配だ。トド松が出ていって一分、二分、三分……はあああ僕って本当馬鹿だな。行って欲しくないのに。じわりと涙が自然に溢れる。素直になれないのだ。付き合って半年経つが、こんなこと言ったら嫌われないだろうかと心配になるのだ。トド松の前だとどうも素直になれない。

「行くなよ……」

ぽつりと呟いた声は誰にも届かない。虚しく消えていくだけだ。好きだからこそ不安になるのだ。両想いと分かっていてもそれが逆に不安になる。女の子と二人で歩いているのを見ただけで怒りが湧いてきたりそれで喧嘩しちゃったり。僕って本当にトド松が好きなんだ。早く帰ってきて。僕はうさぎなんだ、寂しくなると死んじゃうんだよトド松。
/ 118ページ

この小説のURLを

メインメニュー

トップへ