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鏑木ナチ の日記

PV数18万突破感謝SS 恋はひそやかに薫る
「今度の正月は実家に勘当されにいってきます」

 スイートハートこと妹尾柾樹が、藪から棒にそう言った。
 紺野英生は折りしも風呂上りのビールを呷ったところだったために激しくむせ、咳き込む合間に訊いた。

「勘当って……なんで、そんな物騒な話になるんだ」

「両親は石頭で、おまけに、おれはひとり息子です。紺野さんのことを打ち明けたら大揉めに揉めて、おそらく家族会議でしょう」

「だったら、べつに激白しなくても現状維持でいいんじゃないか」

「それじゃ、いやなんです」

 ぴしゃりと遮られると同時に缶がひったくられた。

「一緒に暮らしはじめてもうすぐ二年。新年を機にケジメをつけたいし〝男友だちとルームシェア〟で押し通すのも限界ですし、それに……」

 妹尾はビールを飲み干してから言葉を継いだ。

「かつて婚約者に裏切られたおれが再び人を愛する歓びを知り、その人にも愛されていることを両親にも知っておいてほしいんです」

 かすかに潤んだ声で締めくくると眼鏡を外し、真紅に染まった顔をこすった。

 わかった、と紺野はことさら重々しくうなずいた。

「マジに親御さんとバトルったときは『息子さんを俺にください』って土下座しにいって俺らの関係を認めてもらうから安心しろ」

 こつん、と額をぶつけて微笑みを交わした。

「勇気をください……両親と対峙するために必要な勇気を」

 誘いかけるようにこころもち突き出された唇に、しっとりとくちづけた。

 それから数日後。紺野は富山湾に面した実家で、家族そろってお雑煮を食べている最中に、こんなふうにぶちかましてみた。

「添い遂げる予定の恋人がいるんだが、相手は三つ年上の男性だ」

 座敷が一瞬、不気味に静まり返ったあとで、

「アホぬかせ!」

 父親が摑みかかってきた。皿小鉢が飛び交う騒ぎになるなかで、グッジョブ兄貴、と妹が親指を立てた。

 その翌々日、紺野は予定を繰り上げて〝愛の巣〟に帰ってきた。
 リベラリストのほうだと思っていた両親ですら、息子に同性の恋人がいることに拒絶反応を示す。
 爆弾宣言をしてのけたあと、さんざん話し合ったが平行線に終わった。
 この調子では理解を得るのは遠い道のりだと、ため息をつく。
 で、あれば、妹尾はモラリストらしい両親を相手にもっと苦戦を強いられているに違いない。

 その妹尾のスマホが昨夜来、つながらない。
 単に電源を入れ忘れているだけだ、と思うそばから不安がふくらむ。
 両親と口論になったたあげく、スマホを没収されて軟禁状態におかれているのでは──と。
 実家の住所と電話番号を訊いておかなかった迂闊さが悔やまれてしょうがない。

「早く、帰ってこい」

 ベランダに出て手すりに寄りかかり、駅へとつづく通りを見下ろす。
 と、飛ぶように駆け寄ってくる人影があった。
 ハロウィンの日の渋谷クラスの雑踏の中でも見まちがえっこない、妹尾の姿が。
 
 紺野は手すりから身を乗り出した。
 妹尾の視線が上に流れ、紺野と目が合うと両手で丸を作った。
 白い歯がこぼれて、きらりと光る。

 暗に相違して両親が祝福してくれたのか?
 首尾を聞くのが楽しみだ。
 紺野は大きく手を振り返した。


2017-03-12 22:52:18

日記へのコメント

  • 鈴木ナチ様

    度々のコメントすいません(^^;;

    それ、いいですねー!
    妹尾さんっぽくて、すっごくいいですd(^_^o)

    タイミングってありますよね〜。
    可愛いです、妹尾さん^_^

    ワクワクするエピソード、有難う御座いました!





    チョモ 2017-03-15 06:36:09
  • >チョモさま

    妹尾は、心の中では紺野のことを「英生さん」とで呼んでいるのですが、面と向かってだと照れて言えない、それ以前に名前で呼びかけるタイミングを逃しっぱなし、という設定はどうでしょう?

    で、毎晩、入浴中に「あしたこそは英生さんと呼ぼう」と誓いを新たにする、と。

    なお両手で丸はお察しのとおり「とりあえず両親が話に耳を傾けてくれた」です。
    常に鋭い意見をありがとうございます。
    鏑木ナチ 2017-03-14 22:49:09
  • 鈴木ナチ様


    緊張しますね~、大事な両親への報告。

    紺野さんの家族の反応…お父さんと妹の違い(苦笑)


    妹尾さんの両手で丸は、上手くいったって事なのかな?
    最初っから祝福は難しいでしょうが、反対されるまではいかなかった?と予想しました(笑)

    でも、妹尾さん相変わらず、敬語なんですね。

    名前呼びもしてなさそう~。

    久々に『恋は~』の2人を見れて、嬉しかったですし、懐かしさも感じました☆





    チョモ 2017-03-14 20:55:27

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