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鏑木ナチ の作者ニュース

「バイバイ・ビターラブ」完結記念ご愛顧感謝SS

来るものは拒まず去るものは追わず。

それが加納の信条だ。
らしくないことをしている、という自覚はあった。
向洋高校の校門が視界に入る場所に愛車を停めて、光希が下校するのを待つなんて立派なストーカーだ。
もっとも声をかける気は毛頭ないからセーフか。
元気な姿を確認で切れば満足、且つ、すみやかに退散するつもりだ。

ドライバーズシートにもたれて腕組みをし、四ヶ月前の夏の午後に思いを馳せる。
あの日、光希に話しかけた時点では下心はなかった、と誓える。
偶然、目にした泣き顔があまりに痛々しげで素通りできなかったのだ。
美味しいものを食べている間は哀しいことを忘れていられるから、腹いっぱいごちそうしてあげたくなったのだ。

光希の第一印象は「健やかな子」。
遊びでセックスできるタイプじゃない彼がすがりついてくる背景には、特段の事情があるのだろうと察しがついた。
試しに水を向けると案の定だった。
慰めるついでに抱いたのは、役得というやつだ。

と、光希が自転車を押して、背の高い男子とつれだって校門から出てきた。
笑っていた。
底抜けに明るい笑顔に安堵して、加納は運転用のサングラスをかけなおした。
と同時に勘が働いたのか、光希のツレが敵意のこもった視線を周囲に投げかけた。
なるほど、と加納は鬚(あごひげ)を撫でた。
のっぽの彼は、さしずめ光希のナイトだな。

愛車を発進させて、友人が営む探偵事務所に向かう。
そして、こんな依頼をした。

〝向こう十年間にわたって年に一回、一週間ずつ。光希がどんな生活を送っているのか調べてほしい〟。

幸せに暮らしているようなら、それでいい。
だが、もしも苦しんでいるようなら、それとなく手を差し伸べてあげよう。

その感情は恋愛のそれというより、父性愛に近い。
花を手折らせてもらった者の義務に名を借りた、アフターサービスだ。

2017-01-29

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完結
「恋い焦がれる人は姉さんの夫です」。

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